MAXXIS太魯閣国際ヒルクライムレース参戦記

2011年11月24日


 台湾で行われた総距離90km、獲得標高3600m以上のヒルクライムレースに参戦してきた。ゴール地点が3200m地点ということで後半は息苦しさとの戦いだった。コースはゴールが近くなってきてから20%越えの激坂などがあり、チャレンジ精神をくすぐられる素晴らしいコース設定になっていた。ゴール後はなんともいえない達成感に身体が包まれた。ここからはレースの内容、そして台湾にある日本人学校訪問などの参戦記として書いていく。

 11月18日。この日は台湾への移動と到着後に大会の記者会見が予定されていた。一緒に参加した日本人選手は5名。福島晋一選手、宮澤崇氏選手、才田直人選手、廣瀬由紀選手と自分である。5人とも冬のタイ合宿で一緒になるメンバーでとても気持ちの良いメンバーだった。予定通り飛行機で台湾へ。台湾に到着してすぐに記者会見の会場へ移動し、新聞記者やテレビクルーのいる会場でレースへの意気込みなどを語った。その後は大会スポンサーであるMAXXISさんとの夕食に誘われ、台湾の食を楽しんだ。

 11月19日。この日は日本人学校訪問と、レース会場となる花蓮までの移動日であった。午前中は台北にある『台北日本人学校』に訪問し小学生との交流会に参加してきた。学年は3,4,5年生で総勢300名の前で自転車の組み立て法、仕組み、自転車教室を2時間かけて行った。どの学年も元気がよくつぶされそうになりながら記念写真を撮ったのを覚えている。皆、礼儀正しかったのが印象に残っている。その後、花蓮までの移動はなかなかの苦行だった。それはこの日を含め約1週間雨が降り続いた影響で各所で土砂崩れが発生し、至る所が一方通行になり、進む車は思うように進んでいけなかった。そのためこの日はバスの中で多くの時間を費やした。
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 11月20日。天候は快晴。昨日までは湿度が高く梅雨時期のような雰囲気だったが、この日はさわやかな風が吹いていた。日本からツアーできた皆さんと一緒になってレースコースとなる太魯閣公園を走ってきた。この太魯閣渓谷は見た者を圧倒する渓谷が並び、200mを超える崖の壁は1枚の写真では撮りきれないほどに大きかった。レース中はこのような景色をみる余裕がないので、貴重な体験となった。この日はまだポジションの決まっていないMTB29erのポジション調整をしながら翌日の準備を進めていった。
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 11月21日。天候は強い風と小雨。朝3時過ぎに起きてレースの準備を進めていった。スタートは6時。まだ暗い中を一斉にスタートしていった。序盤は先頭付近でペースを保ちながら会話のできるスピードで走っていった。海抜0mからのスタートのためはじめのうちはほぼ平坦でウォーミングアップにちょうど良かった。それからしばらく進み、アップダウンが続く太魯閣渓谷に入っていった。話では2000m付近まではまとまって走っていくと聞いていた。事前の話では。しかし、アップダウンが本格的になってくるとアタック合戦がスタート。あ~はじまっちゃった。。1時間半までは応戦していたが終わる事のないペースアップに先頭集団から離脱してしまった。そこからは台湾の選手と一緒になって頂上を目指していった。言葉はわからないが、気持ちは同じ。とても気持ちの良い時間を過ごすことができた。沿道からは『加油!』との応援があり、交流がとても楽しかった。スタート時は雨が少し降っていたが、雲の近くまで来ると雨は止み、暑いくらいの日差しが照らしていた。途中、渓谷の間から虹が見えたり、これから上るつづら折りの上り道が見えたりと、雄大な景色の横を黙々と上っていった。2500mポイントまでは斜度の急な場所は少なく、どちらかというと緩いダラダラ上りが続き途中何度も集中力が切れそうになった。道の横にある標高看板を目安に3200mを目標に走っていった。標高が上がるにつれて息は上がり、ペースは落ちていった。そして、幾度となく足が攣るので、積極的に水分補給をして足をごまかしながら走っていった。標高2500m以上の走行はほとんど経験がなく、未知の領域を走る不安感と、どうなるのだろうというワクワク感が重なりあい、変なテンションになり始めていた。一緒に走る台湾の選手も入れ替わりで、それぞれのペースで上っていくという感じであった。できるだけ声を掛け合う事、そして、できるだけ一緒に走って集中力を保つように心がけた。このコースは2600m付近から一度200m以上も下るポイントがあり、そこをなるべく身体を冷やさないように進んでいった。ここまではなんとか来たという感じ。
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 ここからが第2のスタートという感じだった。一度下ってからのコースは一気に斜度が上がり、空気も薄く感じた。斜度は20%を超え、階段状に上っていく先に、また上りが見える。という気持ちが先に萎えてしまいそうな上りが続いていた。ダンシングを織り交ぜながらの上りも疲労からかなかなかケイデンスが上がらない。そうしているうちに山の頂上が見え、心身ともにエネルギーに満ちてくるのを感じた。3km手前からゴールの標識があり、1踏み1踏み確実に前に進んでいった。ゴール地点には観光客の方がたくさんいて、皆が声をかけてくれた。ゴールの瞬間はなんとも言えない達成感に包まれた。レース後はゴールしてくるライダーを応援しにいった。皆が最後の最後まで力を振り絞る走りをしているのを見て感動することがきた。凄いヒルクライムだ。下山の途中、身体は疲れていたが、また来年も参加しようと思うレースであった。

 11月21日。この日は台中にある『台中日本人学校』を訪問した。ここは、スポンサーであるCROPS社員の方の息子さんが通っているという学校で、訪問を楽しみにしている学校だった。学校の外観はとても綺麗でグランドもとても整備された素晴らしい学校だった。この学校では全校生徒190人とその親御さんが自分たちを出迎えてくれた。ここではROADとMTBの違い、バイクの特性を『見て、触ってもらう』スタイルで交流会をしていった。外の会ではグランドを全速力で走るというデモンストレーションも披露し、子供達はとても喜んでくれた。ここの学校の子供達は素直で明るい生徒が多いのが印象に残っている。学校での交流会のあと、そのまま台北にある空港に向かい帰路についたのである。
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 今回は台湾の方々との交流の機会が多く、その中で台湾に対する愛着が深まっていくのを感じる事ができた。一見、日本と同じように感じる台湾も道路を走る向きは逆であったり、自転車のブレーキの左右が反対だったりと違う点をいくつも発見する事ができた。また、漢字を使ってのコミュニケーションなどこれまでの歴史を感じる事もできた。親日家が多いという台湾ではあるが、それは我々の祖先がしてきたすべての関わりの中で出来上がった文化だと感じた。そして、今回のような1つ1つのイベントが同じように後世に受け継がれるのだと思うと、今回のような交流も大切な意味を持つものだと感じさせられた。今では自転車業界にとって台湾という国はなくてはならない存在になっていて、これからはもっと深い関係になっていくであろうと感じている。今回のタイミングで台湾を訪問出来た事はとても有意義なものだったと感じている。

 レースでは獲得標高3600m以上、走行時間5時間12分。平均時速17.1kmの長い長いヒルクライムレースを完走する事ができた。日本の乗鞍を4回ほど上ると言えば想像できるだろうか。とてつもなく長く、終わりはあるのか?と疑うほどに上るこのヒルクライムは究極のヒルクライムと言えるのではないだろうか。初心者には完走は難しいかもしれないが、この完走に向かって日々努力をしてゴールでもらえるフィニッシャーメダルを手に入れる事はとても価値のある事だと感じる。自分は来年もチャレンジしたいと思う。
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