2008年MTB世界選手権大会 レースレポート

2008年7月 3日


・ レース名 2008MTB世界選手権大会
・ 日時    2008年6月22日
・ 場所   イタリア マレ
・ 距離    6200m×7Laps   43400m
・ 結果   77位  (男子エリート 124人中)
  
・ レースサポート  「JAPAN ナショナルチーム」          

・レースレポート
「今自分にできるすべての準備をしてイタリアに行こう!」と決めた5月末。4年ぶりの日本代表だ。気持ちは自然と高まり、ここ数年の同じ時期とは全く違うモチベーションでトレーニングに集中する事ができた。純粋に「少しでも強くなりたい!」。そんな気持ちで出国のその日までを過ごした。

イタリアに到着。思ったよりも時差の影響をうけずにレース当日を待つ。時差ぼけは到着4日目で完全になくなった。レース会場近くのサイクリングロードで調整を繰り返した。僕の出場するレース当日までは、様々なレースが開かれた。各国代表チームリレー、男子ジュニアXC、U23(23歳以下)XC男子、男子DH、女子DHなどなど。日本代表の選手が出場するレースは応援に行った。毎日が興奮。感動。改めて「レースは楽しい!」と心から思った。各選手のがんばりに、自分もモリモリとやる気が出てきた。各クラスで優勝者が決まるわけだが、その瞬間を見れば見るだけ「優勝者が優勝者である理由」が見えてきた。僕に見えたのは「心」だね。使っている機材なんて関係ない。「世界1の心」を持っている選手は優勝しているように見えた。レースを見るってのも貴重な事だと感じた。

さて、僕のレースの行われるコースだが、とにかく「キツイコース」だった。1周約6kmで、スタート&ゴール地点は芝生、登りはジープロードや硬く締まった土の路面。下りは気を抜くとかなりダメージが大きそうな下りが登りの直後に待ち構えていた。長い登り坂は全部で3つ。どれも勢いとか気合いだけではいけない長さで、ハードヒルクライムといった感じ。バランスの良いコースだとは思ったけど、試走1周目は本当に「マジですか?!」って思った。数箇所テクニカルなところはあったけど、どこも本番までには攻略することができた。登りの割には下りが短く、常に登らされている感じのコースだった。

レース当日。天候は晴れ。気温は暑いくらいで30度近くまで上がっていた。スタートまでは氷でキンキンに冷やしたタオルを首元に巻き、体温上昇を抑えた。(監督指示)スタート位置は、UCIランキングが反映され、ほとんどZEROに等しい僕は、最後尾から2列目。先頭の選手は見えない位置。参加人数は124人。スタートまでは緊張というよりワクワク感が先行していた。今回の目標は『完走』。目標が低い!と言われるかもしれないけど、世界の舞台で背伸びしても格好悪いし。トップはこのコースを16分台で回ると、前日のミーティングで話し合われた。とにかく1人でも多く抜くこと、1位でも前でゴールすることを自分に言い聞かせ、スタート1分前。スタートで遅れる気はしなかったので、どんどん抜いていくイメージを膨らませた。

そして「バンッ!」1年に1回の世界選手権がスタートした。スタートループはまわりの流れにあわせながら進んでいった。しかし、コース幅が狭くなってくるとヒジでの押し合いが始まった。「なんだ!このチクショウ~」と負けないようにぶつかりながら真っ直ぐ走ることに集中した。途中九十九折になっているところで先頭が見えたのだが、ものすごくスムースに走っていた。僕はコーナーの1つ1つでストップ&ゴーを繰り返した。息はハァハァ。心臓はバクバク。目もチカチカするくらいにスタートして数分でMAXに。日本では考えられない事だ。前半は牧草を進むのだが、皆が前に前に。コース上に出来上がった走りやすいラインなんてお構い無しに皆全開。そんな状態で1つ目の下りに突っ込んでいくから下りの前は大渋滞。完全に数秒立ち往生。そんなことをしていてもトップとは離れるばかりなので、自転車をかついで前へ前へ。他の選手との接触で自転車が壊れそうになるが、このときばかりは仕方がない!という感じ。それが終わり1つ目の長い登りを登りだした。皆1列棒状。「抜きたい!でも抜けない。」状態。この時点ですでに足はパンパン状態。今のスピードを維持するのが精一杯なところでなんとか1つ目の登り坂を登った。そして、下りに。また物凄い渋滞で、下りに入ってすぐに自転車からは下りていた。「あ~!!!!!!!止まりたくないのに~~~!!!!!!」1つ目のテクニカルな下りはほとんど自転車を押して下っていった。それが終わると、登り返しでフルダッシュ。を1周の半分くらいまでは繰り返していた。そして、そこからがガマンの始まりだった。登りもガマン。平坦もガマン。下りは息が上がっているので、思い通りのラインを通れなくて。ずっと思い通りにならなくて悔しかった。そのまま1周目終了。順位はわからない。


photo by yasushi adachi

2周目は同じところを走る選手を抜いたり抜かれたりを繰り返していた。身体は半端ないほどに熱くなっていた。息は上がりっぱなし。各ポイントで渋滞とかはなくなったが、1周目のストップ&ゴーが思った以上に身体への負担となっていたようで、ありえないくらいにキツイ。そんな感じで2周目終了。

3周目。自分のペースは上げられない状態。息は平坦でもハァハァで3周目の補給所でボトルを受け取る事ができなかった。「落ち着け!落ち着け!」3周目はかなり消耗していた。登りでも通りたいラインを走れなかったし、シフトチェンジをする指にも力が入らないくらいだった。でも、「1人でも多く抜く!」という気持ちは持ち続ける事ができた。登りで詰めて下り手前で抜くというパターンで3人は抜いた。常にラストスパート状態だった。「キツクて当たり前!!!!!!まだいける!!!!!!まだいける!!!!!!!」と前だけを見て走り続けた。すると、今までに感じたことがないような底力が体の奥から出ているのがわかった。日本にいる時とは違う感覚を感じながら3周目終了。


photo by yasushi adachi

4周目。コース脇からの情報で「トップ差10分以上!」と聞こえた。「えっ!もう10分!!!!」それからは「ヤバイ!ヤバイ!まだ終わりたくない!!!!!!!!!」とずっと思いながら走っていた。しかし、空にはトップを追い続けるヘリコプターが近づいてきていた。そしてコース後半、最後尾バイクが僕の後ろピッタリを走り始めた。「全開なのに~!!!!!!!!」そう思いながらスタート&ゴール地点手前でレースを下ろされた。4周目で80%ルールが適応され、僕の世界選手権のレースは終わった。コースから外に出ると、トップの選手がすぐにきた。頭の中は「僕が4周する間にトップは5周・・・・・・。これが世界なんだ」と。自分は1周目こそペースを乱されたものの、それからはいつも以上の走りはできていたと思う。「これが現実。」この差はわかってはいたが、実際に走ってさらに実感した。少し落ち込みそうになったが、「レースはまだ続いている!!!!!!!!」と監督。

「トップの走りをこの目に焼き付けてやる!!!!」とばかりにコース脇にすぐさま行った。僕がさっきまで走っていたこのコースをどうトップは走っていくのか?体の使い方はどうか?ギアの使い方は?選手の目線は?選手の気持ちは?何が僕と違って、何をしたら同じ土俵に立てるのか。特に僕と同じような体型の選手には自然と目がいってしまった。トップ30位までの中にも僕と同じような身長&体型の選手はかなりの割合でいた。「欧米の選手は大きい」というイメージがあっただけで、実際はそうではなかった。「何が違う・・何が違う・・何が違う・・・・・」ずっと観察し続けた。ブレない芯。崩れないフォーム。さっきまでの自分と重ねながら最終周回までコース脇にいた。

目標だった完走はできなかった。でも日本にいたら何回言われても理解できない事が今回のレースに参加してわかった。僕は頑固者で、人に言われても自分が本当に納得しないと実行に移さないという悪いクセがある。今まで、日本にいて何度となく言われてきた「絶対パワーの不足」を痛感したし、そこの克服無しには次に進めないということを納得した。あと、世界で走るには多少なりとも「慣れ」というのが必要なのも感じた。もし世界の舞台で走り続けられたら成績を上げていける自信はある。今回は完走すらできなかったが、チャレンジを続ければ完走が当たり前になり、さらに上位を目指す事だって可能だと思う。そのためには、「絶対パワー値の底上げ」、そして毎日の努力が必要だと感じた。メンタル面は毎日の納得したトレーニングで自信をつけていきたいと思う。日本国内における圧倒的な力を求められている事も自覚しながらこれからの毎日を過ごしていきたいと思う。

今回の遠征は本当に多くの方々の温かい応援によって実現することができました。本当にありがとうございました。この場をかりて御礼申し上げます。


・ レース使用機材
フレーム キャノンデール タウリンSサイズ
サスペンション LEFTY 110SL  95PSI
ギア  (2×9)  F 44T・29T R 11T?34T
ステム  ?20度130mm
タイヤ  MAXXIS 「MONORAIL26×2.1」F/R 2.1気圧
ホイール  MAVIC SLR
ブレーキ  MAGURA marta SL
ペダル  crankbrothers  「candy 4ti」
シューズ  DIADORA 「TEAMRACER CARBON MTB」
ヘルメット BALL 「Sweep R」
サングラス adidas 「evil eye pro race edition」 a126 L
チェーン  KMC  「KMC-X9 SL」
チェーンオイル  EVERS 「CARBON CHAIN SPRAY DRY」
                     (順不同)


« MTB世界選手権の●●だけ。 | メイン | 世界選手権レポートアップしました。 »

  • cannondale